安曇野の山荘, カスヤアーキテクツオフィス(KAO) カスヤアーキテクツオフィス(KAO) モダンな キッチン
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Object of the work

Forest Houseは、都市の喧噪を離れた森の中で、既存の多くの樹木に寄り添うように計画されたセカンドハウスである。 垂直の壁面がほとんどない、テントのような特異な断面形状は、限られたコストで最大限の気積を生み出すというシンプルな目標のために導かれたものだが、同時に、インターネット環境が整えられた現代において別荘に真に必要とされているものは(例えば書物などの)「物品」ではなく、豊かな自然環境を快適に享受できる広々とした「空間」そのものだ、という考えにも基づいている。 「小屋と洞窟の間」のような初源的な室内空間は、郊外住宅の簡素な縮小形でしかなかったこれまでの別荘建築への挑戦であり、今後あるべき姿に対する提案である。

How the work fits into the town planning

標高約700mの敷地は日本列島の中部を縦断する北アルプス山脈の麓、美しい景観で知られる安曇野にある。敷地には安曇野市の景観条例が掛けられており、周囲の環境に即した建築形態が求められた。 枝分かれした特異な平面形状・三角形の断面形状はともに、これまで周辺で類を見ないものであったため、当初、安曇野市景観委員会の意見は紛糾し、計画の説明には通常よりも多くの時間を要した。私たちは、枝分かれした平面形状は既存樹木を伐採せずに保存することを目的に、三角形の断面形状は人のために最大限の床面積を確保しながら、上空を建物近く寄り添った樹木の枝のために残すことを目的に、それぞれ導かれたものであることを粘り強く説明し、最終的に委員会の理解を得て、この建築を実現することができた。

Choice of materials

Forest Houseの仕上材料は、現代の別荘建築に求められる性能を直接的に体現している。すなわち、外部はメンテナンスが極力不要であること。室内はシームレスで一体的な、静けさを感じられる素材であること。床は素足で触れて心地の良い風合いを備えていること。もちろん、現実的なコストも重要な決定要因である。 この観点から、屋根・外壁にはガルバリウム鋼板を使用し、傾斜面から垂直面までを一体的に覆った。雨樋はなく、雨水や雪は周囲の地表に直接浸透させる。 室内は暖かみのある黄色い土を僅かに混ぜた、漆喰による左官仕上げである。それぞれのウイングの幅や勾配が違うことによってもたらされる、わずかな室内高のずれを調整する頂部の曲面仕上げのためにも、伝統的な漆喰仕上げは最も優れた材料であった。 床に使ったのは、幅広のオーク材フローリングである。

Technological-structural choices

Forest Houseの本体構造は木造である。安曇野は冬の寒さが厳しいことで知られているが、木材は熱容量が小さいために短期間の滞在でも快適な温熱環境を得られ、かつ、建築コストも抑えることができる。 初源的な三角形の断面形状は、構造材に曲げモーメントがほとんど発生しないため、細い部材で耐震を含めた構造性能を得ることができる。この結果、仕上材料を含めて170mmの厚さの中に構造材と高性能な断熱材をおさめ、最大幅4.5m、高さ5.1mの室内空間を得ることが可能となった。接合部ごとに角度の異なる複雑なジョイントを有する木製の構造材は、地元の大工による手刻みで全てが加工されている。 傾斜した壁をもつ室内の照明計画も重要な課題である。床の端部、壁際に埋め込まれたLEDの照明器具は、わずか17mmの幅で室内に充分な明るさをもたらす。照明器具と床に埋め込まれた暖房器具はインターネットによる遠隔操作が可能で、真冬に到着したオーナーを、明るく暖かな室内が迎える。

Use of Materials in respect of the context

Forest Houseでは、現代的・工業的な材料と、伝統的・職人的な材料がともに用いられている。これらはいずれも情緒的な理由ではなく、周囲の自然環境(空間的コンテクスト)と共存・調和する建築形状、そして現代の別荘として求められるサステイナブルな性能(時間的コンテクスト)から、論理的に導かれて採用された。

写真撮影:吉村昌也

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