低予算でも可能なコンクリートの住宅

のどかな田園風景の残り、比較的周囲が開けた敷地に建つこの家はコンクリート造ですが効率の良い外断熱を取り入れているのでご覧の通り外観は白の塗り壁で仕上げていますが、所々打ち放しコンクリートを見せています。道路側の正面ファサードには玄関廻り以外には開口を設けずミニマルな表情を作っています。玄関ポーチもコンクリート製の板を重ねた階段とし、シンプルなデザインに仕上げています。

白壁と美しい仕上がりのコンクリートがしっとりとした質感を醸し出し、その潔いフォルムによってこの地に新しいスカイラインを作ります。玄関上部には大きなはめ殺し窓を配置し外部との対話を生み出し、内部からも空の移ろいを感じる設計となっています。

正面と反対側のファサードをちょっと見てみましょう。一部１階建てとなっています。実は日射角度を計算した上で屋根スラブと一体化した庇の寸法を設定しているんです。見事なまでに綺麗に仕上げられたコンクリートスラブがシンプルに採光を調整し、軒先に日影をもたらします。このミニマルなデザインを実現するのは実はそう簡単ではありません。綿密な構造家との打ち合わせや現場での職人さんの技術をうまく指揮する建築家の尽力によって完成するのです。低予算で実行するのはなかなか難しいのですが、それを可能にしてくれるプロとの出会いは理想の家づくりには欠かせません。

中を見てみましょう。内部は打ち放しコンクリートがそのまま仕上げとなっています。施工がなかなか難しいミニマルな跳ね出し階段がひと際美しい玄関ホールです。主な生活空間であるLDKには落ち着いたグレーの扉から入ります。組み合わせた磨りガラスが空間を柔らかく仕切り、お互いに光を伝え合う役割もしています。

クライアントたっての希望であった北欧のビンテージ家具がコーディネートされたリビングダイニングです。無機質になりがちな打ち放しコンクリートを白の塗り壁や黒塗装を施した足場板などで和らげ、暖かみのあるどこか懐かしい雰囲気の北欧家具ととても合っていますね。ちょっとだけ写っているのが業務用をカスタマイズしたオリジナルキッチンです。様々な部分で予算と格闘しながらより理想に近い家を作ろうとアイデアをしぼった住宅なんです。

リビングから屋外テラスに続きます。開口を大きく確保しリビングからも山や緑の風景が楽しめます。また明るめの色調である打ち放しコンクリートのテラスを通して自然光が入ってくるので室内も明るく開放的です。 恵まれた自然環境に囲まれた中、広めのテラスでは家族や仲間が集まってバーベキューなども楽しめますね。様々な日常生活のシーンで笑いが絶えない楽しい家、そんな家を住人はきっとどんどん好きになっていくのでしょう。

２階の居室です。こちらの窓からものどかな田園風景が望めます。低めの天井によって周囲に溶け込むような佇まい、この家もきっと風景の一部となっていくのでしょう。飾り気のない削ぎ落とされたデザインが住まい手の生活そのものを主体にしてくれるので、生きていること、家族と住まうことを実感できるような家だと思います。天井の高さや開口の位置にメリハリをつけることで多様な空間を生み出しており、低予算でも豊かな住空間が生まれることを証明してくれました。

家を持つということは誰にとっても一大イベントです。 限られた予算のために諦めかけた家づくり。そんな厳しい状況だからこそ生まれるアイデアや努力もあるのです。家は買うのではなく建てるものです。最適な建築家を見つけて共に建てる家、そんな住宅がこれからどんどん増えるといいですね。

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